人生初の富士山登頂(後編)

(続き)
では八合目の宿に着いたところからの続きです(笑)

まずは動かない足を引きずって宿に入り、やっとこ足を曲げて、玄関で登山靴を脱ぐ大変さ、なんでこんなに何回も紐を縛るのか!、とまた一人文句。宿の人の案内に従い、靴と荷物を持って、男女の配分を考えられた指定の場所の寝袋を割り当てられます。我々は家内、息子、私の順で並び、家内の隣は女性、私の隣は男性でした。スペースは本当に寝袋一つ置けるだけのもの! これが山小屋か~、初体験です。耐えられない人には耐えられないんだろうな~、この窮屈さとプライバシーの無さ(笑)

そこで寝る準備をしてしばし待つのですが、既にこの日の疲れでウトウトと、、、そんなところに「夕食ですよ!」という声。広間に行くと、夕食は山小屋の定番?の(レトルトの?)カレーライス! 今日は豪勢に?卵入りのハンバーグも!!
まあきっとこれがここでは贅沢な食事なのでしょうね(^_-)

食べ終わると有無を言わせず?就寝へ! キレイ好きの日本人ならここでまずは風呂に入って寝る前の歯磨き、なんでしょうが、山小屋では当然風呂などなく、着替える人はいますが、所詮汗に砂まみれの体、衣類だけ変えても中身は汚いままなので、と多くの人がそのままの姿で就寝!、もちろんうちも(^^) 

そして歯磨きですが、富士山では歯磨き粉を使って口を濯ぐことは許されていませんから、ただ水でブラッシングして、ペッと吐き出すだけが許される行為。水も自分の持ち込んだ飲料用のペットボトルの水を使わねばならず勿体ないので、もう口の中が砂だらけなので、まあいいや、という諦め。足も重いし、外に出るのは面倒だしと、結局口もゆすがずそのまま就寝。あ、いや、深酒して帰ってきてそのまま家の床の上で寝ている状態、と思えばいいのですよ!

しかし狭いので本当に寝返りを打つとすぐ隣の人に当たるため、身動きも出来ない状況。しかも(自分も含め)おっさん達の?いびき合戦の状況で「なかなか寝られなくて困る」という話でしたが、8合目までの800 mを登ってきた疲れで、家族3人あっという間に就寝! なんと図々しい家族!? 鈍感力、鈍感力!(爆)

夜8時に寝て、11時頃に一度目覚めます。そう、ご来光を山頂で見る人たちがこの時間帯に出発するとのこと。壁越しにガイドさんの説明が聞こえてきます。うるさくはないけどやはり気にはなりますね。山頂でご来光を見るためには、まだ暗くて視界の悪いところを登るので、いささか危険な上、周囲何も見えないので面白くないのではないか、ということで、私たちはそれを選択しませんでした。
そんな説明の声を聞きながらも再び夢の中へ! 次に起きたのは午前1時半。山小屋にあたり強い風の音で目が覚めました。ちょうどおしっこもしたくなったので、外のトイレに向かいます。

見上げれば空には満天の星が!、、、というはずだったのに、寒さでそれどころではなく、単にトイレに行って戻ってくるだけ。星くらい眺めればよかった、と後で後悔しました(涙)。そして再び夢の中へ。

寝相の悪い息子もどちらに寝返りを打っても人がいるので、それ以上暴れることなく、大人しく寝ていたようでした(笑)

8/27(月)

午前4時半。なんか本当に夢を見ていたのですが、「はい、ツアーの皆さん、起床時間です。起きて出かける準備をしてください」という宿の方の声が頭に入ってきます。あ、また少しは寝たんだ!、ということで、一斉に皆が跳ね起きて出発の準備に。普段は寝坊助で起きられない息子も瞼をこすりながら準備開始。

もともと寝る前から起床後すぐに出かけられるようにという指示があったため、すんなりと出発準備ができました。朝5時10分の日の出を外で待ちます。

そろそろ明るくなってきている空。東の雲海の中に太陽と思われる楕円の端がなんとなく伺えます。

しかし寒い。正確な場所ではないですが、気温1度。とにかくMAX着込んでご来光を眺められる場所にぞろぞろと移動します。

そしてご来光!

みなさん一斉にシャッターを押す中、我が家は神社訪問の時と同じように二礼二拍手一礼。今日ここで家族3人元気で無事にご来光を拝めたこと、そしてこれからトライする登頂の成功、さらに帰りの旅路の無事を祈ります。

ご来光の瞬間が終わるとすぐにお日様は強く光り始めるため、もう周囲は朝の感覚。さあ5時半、ここから山頂に向けて出発! 昨日寝る前にはもう足が、特に太ももがパンパンでしたが、一晩寝て少し回復。まだ疲れはありますが、なんとか歩けそうです! そして5号目から感じていたなんとなく頭が痛い感じも悪化することなく、高山病も大丈夫そう!

八合目から山頂まではあと2合分!、と思うと大間違い。五合目から八合目まで前日は800 m登り相当くたびれたのですが、八合目から山頂までは600 m、少し登ると山頂はすぐそこ!のように見えるのですが、これがなかなか着かないのですよ!(苦笑)

1時間半くらい登って朝7時、8号目の最後の本八合目。え、ここまで登ってまだ八合目なの?って、感じで、山頂はまだ先。とにかく先に行きましょう!

お日様は既に高く上がり、見上げれば見渡すばかりの青空! 今日も自称「晴れ男」パワー炸裂です!

で、当然ですが、緑の木々などなく赤茶けた溶岩と思われる山肌をジグザグに登っていきます。この頃からとにかく上を目指す気持ちが強いのと、見渡す風景は山中湖に河口湖、先に八ヶ岳など、基本五合目で見た風景が高さが変わって見方が違うだけで、その光景も見慣れてしまい、そろそろ写真を撮る気も無くなって来てます。

9合目を過ぎて、さらに空気が薄くなってきているのを感じ、高山病予防のため、深呼吸をする回数も増えます。口の中の砂も気にせず、ペットボトルの水を飲み、昨日以上のペースで水分摂取!

そして本8合目から登ること2時間、朝9時。ついに鳥居が見えてきました!、山頂は直近!

一礼しながら鳥居を通過し、体力を振り絞って、階段を登ればそこは山頂! やったー!、着いた~!!

とにかくヘタレこみ休憩。やったな~、と家族3人で喜びと達成感を分かち合います!

グループの点呼が終わると1時間の自由時間。まずは空腹を満たすのと、以前に教室員から聞いた山頂のチョー高いラーメンを食べるためにお店へ!

トン汁 一杯800円、カップラーメン 一杯800円、うどん 900円、とべらぼうな高さ! そりゃ、こんな山頂までものを運ぶの大変ですし、儲けだってないとね。

ということで、記念に家族3人で日本一高い場所で日本一高いカップラーメンを2,400円払って購入!(笑) 血圧上昇中の私ですが、勢いでスープまで完食(汗)

食べ終わったら、信心深い私は山頂の神社へ参拝。富士登頂のお礼と帰りの無事を祈ります。

とここでお守りを見ている時、家内が長寿のお守りを発見。リハビリ中の義父を世話して大変な義母の為に買おうと思っていると、隣の見た目年配(高齢?)の女性が「あら、それ長寿のお守り、お母さんに買うの?」、「はい」、「私の母は90超えてて、既に介護施設に入っているから、長寿のお守りなんか買って長生きされると大変だから買わないわ!」と一言。ふ~ん、そうですか、って感じで、まあ高齢社会日本の縮図?を見た気がしますね、、、

1時間の自由時間が終わると集合。下山前に火口の見学。近くまでは近寄れないので、一番深いところがどうなっているのかは見えず。まあ、いいのですが、写真撮っても、これどこ?、って感じですね(汗)

10時すぎ、さあ下山開始!

で、何が辛いって、この下山が地獄。登りとは比較にならない砂埃を巻き上げながら、ひたすらブルドーザー道のジグザグを下るだけ。最終的に5合目まで昨日と今日登った合計1,400mを下るわけで、これが延々と続くわけです。既に足が疲れているのに、登りとは違う筋肉を使い、とにかくひたすら下る。

下り始めはまだ晴れていた空も、9合目に入ってくると段々雲が湧き上がり始め、本8合目を過ぎるようになると辺りは一面の濃霧(それでも雲?)に包まれたよう!
山頂に登るまでは青空で、山頂を見た後は下界は濃霧の中。これもなぜか今自分の置かれている状況を暗示しているような天気の変わりようです(笑)

これ以降疲れもあり、スマホのバッテリーの充電も減ってきたので、撮影はしなくなります。

ジグザグ道の角で停止、再び出発、角で停止、を延々と繰り返すのですが、ここでは自分のペースで進むことが解禁され、私と息子は砂利道を小刻みステップでちゃかちゃか下り、いつの間にか先頭を争うように(^^)

8合目の終わり近くまで先頭を争っていたのですが、そこでの休憩時間に、「ジグザグは後1時間半ですから!」という言葉を聞いて、気持ちが萎え、魂の抜けた廃人のようにただダラダラと無心で坂を下ることに。

「まだか~、まだか~」とだけ思うまるでゾンビでした。

7合目を過ぎるとジグザグはなくなり、ただの下り。6合目まで戻ると、あ~、ここまで来たか!、もう少しだ~、と思うのですが、まだまだ富士山は許してくれません(涙)

泉ヶ滝までは一度下り、そこから富士スバルライン5合目に向け、またひたすら登るのです。これがまたどこまで行っても上る一本道。しかも登りはまた歩くのが遅いお年寄りに合わせるので、これまた疲れます。

私の頭の中を巡るのは「あー、もう結構。富士山は一度で十分!、もう二度と来ない」でした(笑)登山家からすれば大したことない、と思われても、低山であっても緑の木々の中、マイナスイオンを吸いながら、行く場所行く場所で景色の変わるような山さんぽがうちの好みだな、と。

延々と上り続けて予定時間をこれまた過ぎた3時半に出発点に戻る。無事登山は終了! とにかく疲れ、5合目での買い物などできないくらいでしたので、出発までの時間をベンチで過ごすことに。

そして出発。東京に戻る前に、富士眺望の湯「ふらり」温泉へ!

これまで山さんぽは終わったら車でそのまま自宅に戻って風呂に入っていたのですが、昨晩風呂にも入らずにいたためか、もう早く入りたくて、でも体は痛いのですが。これがまた気持ちいいですね、山に登った後の温泉は! 体が痛くて、おまけに完治してない五十肩のせいで、体を洗うのも難儀するのですが、とにかく湯船に浸かると気持ちがいい!

湯上りにはレストランで富士桜高原麦酒を一杯! く~~、って感じです。

温泉の建物を出ると、それまで濃霧で全然見えなかった富士山が、再びその姿を現しました!

バスで出発すると富士山はさらにはっきりと見え、その美しいフォルムを我々に見せつけてきているかのよう。あの山の頂上に数時間前には痛んだな。これから富士山を見るといつもそう思うことになるでしょう。

しかしこのお別れになって登場する富士山、なんか嫌な予感。そうなんとなく
「また来なさいね!」
というメッセージにも。いや、嫌です、もう来ませんから!、と思えば思うほど、美しく見える富士山。嫌だな~、海外からのゲストが来日した際に、富士山に登りたい!、何て言われたら、また来るのだろうか、、、

と思っていたら、富士山はあっという間に雲に覆われ、姿を消します。
「え、ヤダ、俺もう来ないから、絶対来ないから!」
と念じながら眠りの中へ、、、

中央道の渋滞を抜けて八王子を過ぎ、国立府中から調布へ。ここで降りたら近いんだけどな~、と思っていると雷と同時にすごい雨が!

どうやら京王線が全線ストップになるまでの激しい雨。最近多い都市部のゲリラ豪雨。
どうにかこうにか新宿まで到着したものの、京王線がまだ止まっているので、中央線も混む可能性が!

普段は「帰る」としか言わない息子が「食べて帰る」と言うので新宿で食べて帰ることに!
サイゼリアも雨宿り?の人でいっぱいのため、近くの居酒屋へ。地酒のお店のようでしたが、日本酒飲むと明日朝起きられないので、おとなしくビールで無事の富士山登頂を祝い乾杯!

京王線の運転再開を確認したところで、中央線各駅停車で帰宅。まだ三鷹行きがある時間なので、重い荷物を持っても混雑せずに吉祥寺まで戻れました。

荷物が多いからタクシーで帰ろうかと思ったら、タクシー待ちの行列。これはダメだと仕方なくバスで。
やっとこさっとこ帰宅したのはもう11時過ぎ。これでこの夏一番の行事が終わりました。

今回富士山登頂をすると何を感じるのか、それをずっと思っていたのですが、私にとっては富士山登頂は苦行に過ぎず、ただ日本一の山を登ったという達成感と自然の不便さ、さらに自分の未熟さ、でした。

なんかもっと哲学的なものを感じるかと思ったのですが無かったですね~
まあ、もともとがこう言う人間、それに見合ったものしかやってこないのでしょうね(苦笑)

ということで、翌日から普通に大学に出勤! しかし足はかなり重かったです(涙)

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