あれから10年:3.11の3ヶ月後の仙台トランスポーター研究会開催

昨日は2021.6.11でした。
そうあまりに衝撃的だった2011.3.11の東日本大震災からちょうど3ヶ月後の2011.6.11、アヴァンギャルド”Avant‐Garde”(私の好きな言葉の一つである「前衛」を示すフランス語)な科学的団体「トランスポーター研究会」が、第6回年会を開催したその日から昨日でちょうど10年が経過しました。

2006年12月16日、教授はメンバーになれない真の意味の若手・中堅による集まりという伝説?のトランスポーター研究会の第一回年会が、現在慶應義塾大学薬学部になっている、当時はまだ共立薬科大学であった芝キャンパスで開催されてからまだ5年目の春、東日本大震災が起こりました。

2011年4月1日にその当時の所属の都内のK林大から、主任教授として栃木のD医大に赴任を控え、異動の準備をしていた矢先の出来事でした。
津波による甚大な被害や原発からの水蒸気爆発に茫然自失とし、ただただ毎日被害を伝える映像をテレビで見ているだけの状態。
余震の地震警報が時々鳴っては緊張する数日が続きました。

数日経つと、(水不足やコメ不足、ガソリン不足などありましたが)自分たちの生活はだんだんと落ち着きを取り戻して来ると、自分たちも何か出来るのではないか、何が出来るのだろうか?、ということに頭が回るようになった時、私が、それこそトランスポーター研究会の開設時世話人10名(別名「神10」、笑)の一人のT北大の先生から、「コメを送ってくれないか? 大学から1日2個のおにぎりだけ持たされて、1日仕事に行かされてるんだよ。先生なら知り合い多いから、コメとか集めてくれるんじゃない?」という依頼を受け、え〜、また面倒くさいことを!(あ、いつも大体厄介な依頼ごとが多いのです、汗)と思ったのですが、たまたまそれをトランスポーター研究会のメーリスに流したところ、全国各地、特に直接的に被害のなかった西日本の先生方からぜひ応援したい!、という申し出を頂きました。

めいめいがバラバラに物を送っても、ということで、先方が望んでいるのは「コメ」であることを強調し、コメ不足のない西日本の先生方から米だけを集めることにしましたが、問題はその輸送方法でした。
クロネコさんもペリカンさんも、仙台までの配送を拒否。う〜ん、困った!集めたコメはどう送るか?
そんな時にカンガルーさんは、仙台の局留めで取りに来てくれるのであれば各地から仙台まで送る!、という情報を得て、メーリスにそれを流すと、トランスポーター研究会のメンバーが一斉にカンガルー便を使って米をT北大病院に発送を開始しました。
隣県山形の某先生は、タクシーに米だけ載せて仙台まで行ってもらった、という話もあります。

その結果、数日後に集まったコメはなんと2トン!それは壮観だったそうで(笑)
なけなしのガソリンを使ってT北大の公用車で何度か往復して運び込んだそうです。

そんな記憶も薄れかけた4月4日、T北大薬学部のO先生からまた衝撃の連絡が入ります。

「6月11日に開催予定していた仙台での第6回トランスポーター研究会年会、やります!」

え〜、やるの?、まだ落ち着いていないんじゃないの?、本当に会場使えるの?
と思って世話人も多かったのですが、その思いは4月4日のホームページ上でこう告げられました。

「第6回トランスポーター研究会年会は、当初予定通り仙台で開催することになりました。本年テーマは『次の新しい一歩に向けて』ですが、我々にとっても震災復興の一歩を踏み出す機会となりました。アクセスなど参加者の皆様にいろいろご不便をおかけすることになりますが、是非、多くの皆様の参加をお待ちしております。4月4日 代表世話人 O」

これには驚きましたが、代表世話人が「やる!」というのだから、それは行くしか無いでしょ!
という心持ちで、6月11日の開催に向けて動き出しました。

「大震災後初の100名を越える仙台でのScientific meeting開催(現在事前参加登録者約150名)により、さらに被災地、特に仙台復興を支えるため、仙台を訪れて頂ける多くの方々の参加を希望しております。」

と、日本薬理学会誌に後援学術集会として第6回トランスポーター研究会の開催案内の配信を依頼した際に、薬理学会事務局の方に対して記載したことを思い出します。

そして6月11日に、無事に開催。まだ仙台市内には震災の傷跡がそこかしこに見られました。

教授になると会を辞めるシステム、というのはこの第6回で私が引退報告講演「さらばトランスポーター研究会?」という講演を行ったのが始まりでした(笑)
辞めた後も何度も参加し、結局年会と地方部会を含めて最多参加回数を誇った「ミスタートランスポーター研究会」の称号はいまだに私がタイトルホルダー(のはず)です。

そのトランスポーター研究会も設立から今年で早くも15年。
昨年に続き、今年もどうやら年会の開催は2年続けて延期だそうです。

あの「社会貢献する研究会」を謳ったトランスポーター研究会はもう過去のようですね(^^)
逆ピラミッドになり若い人が見向きもされなくなりながらただ続けることが目的になっている学会・研究会が多過ぎると常々思っています。その延命のために若い人を入れよう、というところも多いのですが、若者に見向きもされない組織は既に存在価値を失っているのだと私は思いますが、そういう発想無く、ただ、「若い人を入れれば解決する」とのはあまりにも勝手では無いかと(笑)
私たちが設立したこのトランスポーター研究会も、その存在感を失ったのなら、解散すればいいのでは?、と、創設の時、最初の世話人会で「用が無くなったら潔くやめる」と話し合った一人である私だから言えることですがね。

そんなことを思う、2021.6.11でした。

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