【著者】
エマニュエル・トッド (著), 大野 舞 (翻訳)
【出版社】
文春新書
【内容】
ロシアによるウクライナ侵攻を受けての緊急出版。
戦争を仕掛けたのは、プーチンでなく、米国とNATOだ。
「プーチンは、かつてのソ連やロシア帝国の復活を目論んでいて、東欧全体を支配しようとしている。ウクライナで終わりではない。その後は、ポーランドやバルト三国に侵攻する。ゆえにウクライナ問題でプーチンと交渉し、妥協することは、融和的態度で結局ヒトラーの暴走を許した1938年のミュンヘン会議の二の舞になる」――西側メディアでは、日々こう語られているが、「ウクライナのNATO入りは絶対に許さない」とロシアは明確な警告を発してきたのにもかかわらず、西側がこれを無視したことが、今回の戦争の要因だ。
ウクライナは正式にはNATOに加盟していないが、ロシアの侵攻が始まる前の段階で、ウクライナは「NATOの〝事実上〟の加盟国」になっていた。米英が、高性能の兵器を大量に送り、軍事顧問団も派遣して、ウクライナを「武装化」していたからだ。現在、ロシア軍の攻勢を止めるほどの力を見せているのは、米英によって効果的に増強されていたからだ。
【一言書評】
2022年5月号の文藝春秋に「日本核武装のすすめ」として一部掲載された内容を新書化したもののようですが、母国フランスでは冷静な議論を許さない状況にあるということで、世界で初めてウクライナ侵攻後に取材を受け、「冷静な歴史家」として述べられたというだけあって、西側のマスメディアでは必ずしも出てこない情報と意見が述べられており、個人的には100%支持しないとしても読むに値するものであると感じました。