青雲はるかに(上)(下)(153)

【著者】
宮城谷 昌光 (著)

【出版社】
新潮文庫

【内容】
(上) 戦国時代末期。大望を抱く才気煥発の青年説客、范雎は無二の親友鄭安平の妹の病を治すべく、悪名高い魏斉(魏の宰相)の奸臣須賈に仕えた。范雎の襄王への謁見が誤解を生み、魏斉の宴席で范雎は凄惨な笞打ちにより歯や肋骨を折られ、半死半生のまま簀巻きにされ、厠室で汚物に塗れた──。戦国の世を終焉に導いた秦の名宰相范雎の屈辱隠忍の時代を広壮清冽な筆致で描く歴史大作前編。
(下) 猛将白起率いる秦軍は、領土を拡大するも宣太后らの私有地が増えるばかりであった。魏の巷間に身を潜めていた范雎は秦の昭襄王への謁見が叶い、天下の秘策「遠交近攻」を献じ、信任を得る。宰相となった范雎は、政争の芽を的確に摘み、韓・魏・趙など隣国を次々に落とし、巨大帝国の礎を築いていく。始皇帝出現前夜、戦国期に終焉をもたらした天才宰相を雄渾壮大に描く傑作歴史長編。

【一言書評】
戦国時代に生きる一人の説客として長らくくすぶり、さらにはお尋ね者となりながらも「志」を持ち、寡欲で颯爽と生きる中で、屈辱を乗り越えて戦国七国中の強国「秦」の宰相となり、無実の罪をきせた者への復讐を果たすとともに、その後の秦の中国統一の流れを決定付ける「遠交近攻」を献策して歴史を動かした范雎と彼を取り巻く魅力溢れる女性たちとの歴史恋愛小説で、個人的には『奇貨居くべし』『孟嘗君』『呉越春秋 湖底の城』『楽毅』と並ぶ、あるいはそれらとは少し毛色の異なるものの、私のベスト5に入るクラスの面白さがあった。

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