【著者】
吉見 俊哉
【出版社】
集英社新書
【内容】
2015年6月に文科省が出した「国立大学法人等の組織及び業務全般の見直しについて」の通知を受け、各メディアは「国が文系学部を廃止しようとしている」と報じ、騒動となった。これは事の経緯を見誤った報道ではあったものの、大学教育における「理系」偏重と「文系」軽視の傾向は否定できない。本著では、大学論、メディア論、カルチュラル・スタディーズを牽引してきた著者が、錯綜する議論を整理しつつ、社会の歴史的変化に対応するためには、短期的な答えを出す「理系的な知」より、目的や価値の新たな軸を発見・創造する「文系的な知」こそが役に立つ論拠を提示。実行的な大学改革への道筋を提言する。
【一言書評】
刺激的なキャッチフレーズが題名となっているため、誤解を招きやすいと言う批判はあると思うが、現代の日本にある「理系は役に立ち、文系は役に立たない」という思い込みの批判から、いかに「文系が役に立つか」の主張へとつなげて行く中で、これからの日本の大学のあり方を展望する、興味深い一冊である。