【著者】
伊東 潤
【出版社】
角川文庫
【内容】
関東の覇者・北条氏康の七男に生まれ、幼少期を箱根権現で過ごした三郎は、越相同盟の証として上杉謙信の養子となる。謙信から初名「景虎」を受け継ぎ、越後・相模・甲州の平和という理想を抱くが、三国間の同盟関係がめまぐるしく変転するにつれ、上杉景勝との家督相続争いに巻き込まれてゆく―。大国間の覇権争いに翻弄されつつも、最後まで己の理想を貫こうとした武将の生涯を描く。(「BOOK」データベースより)
【一言書評】
相模の獅子「北条氏康」を実父とし越後の龍「上杉謙信」を義父とした戦国のサラブレッドである主人公の「上杉三郎景虎」、上杉謙信の後継として景勝と争って敗れた「やられ役」として何度も歴史小説に登場する主人公は、「リーダーシップを最後まで発揮できずに、後継争いに敗れた戦下手で無能な指揮官」として描かれることが多いが、本作でも東国の静謐のための甲相越三和一統という氏康の計に理想を託すが、通すべき筋を守り、真摯に理想を追うも、人が理解してくれるとは限らず、一族の繁栄のため、その時、自らに良かれと思った判断を下すだけ、義も理想もなき人々によって、敗者への道をたどる主人公は、北の空に懸かる蒼い光を発する戈星「北天蒼星」だったのでしょう。