教授選公約の実現(満屋裕明先生、千葉大学客員教授に)

1/10から1/13、正月3連休が明けた今週は、医学部3学年対象の薬理学講義の最終週。「臨床薬理学シリーズ」と銘打って、様々な分野からの外部講師をお招きしました。

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通常医学部に入学してくる学生の殆ど、ないしほぼ全員「臨床医」になることを想定していると思います。勿論それはある意味正しく、そして仕方のないことではあるのですが、医学部を卒業し「医師」の資格を取ったからと言って必ずしも一生を臨床医に捧げる必要はない、あるいは「医師」の資格があることで、資格のない人には関与出来ない仕事に従事することができる、ということを通常医学部では教えてくれません。医学部での教育は基本解剖学、生理学から始まる基礎医学と内科や外科などの臨床医学の講義と実習を積み重ねる中で、すべての科目を必修として取得することで卒業することになります。医学部には他の学部にあるような卒業研究などはなく、最終的に卒業試験を経て卒業し、医師国家試験を受験するという「試験」を通過するということが目標になります。そのため、小学校中学校高校、そして人によっては予備校で「真面目に」授業を受けて、「試験でいい成績をとる」ことが偏差値の高い「いい?」大学に入学することにつながるという「偏差値信仰」に近い感覚がそのまま大学に入っても、ある意味二十歳を超えても続く特殊な世界であると言えます。ですので、私は90分の薬理学講義の中で20分から30分雑談をするのですが、100人いると2-3人は「講義に関係ない話はしないで欲しい」という希望を伝えてくる学生が実際いるのです。先日大学の同窓会があり私が母校の教授になったことを祝って頂いたのですがその際に皆が一様に言うことは「講義の中身は覚えていないけど雑談だけは覚えている!」でした(笑)。医師になるということも「社会人になる」ことには変わりはなく、本来の科目の中には決して現れることのない医師の、社会人の、そして母校の先輩として、社会に出て感じたダイレクトな「思い」を可能な限り伝えることこそが、若者に圧倒的に不足している「経験」を補い、広い視野を持たせることにつながると感じております。

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私が今年担当した薬理学の12コマではほぼ毎回この私からの「思い」を延々と?伝えてきたのですが、今週の「臨床薬理学シリーズ」は、もちろん基礎薬理学を学び終えたところでその応用編であることに加え、様々な立場の講師から伝わる「思い」を感じて欲しい、という狙いで組み込みました。そして私の思いに応えて頂ける素晴らしい講師の先生方にお越し頂くことができました。何より皆さん「無給」なのです。いや、お恥ずかしい限りですが、(地方)国立大の経費削減の影響を受け、最近の非常勤講師はほぼ全員「無給」です。これでは正直いい先生をお招きすることは不可能です。そんな状況でもいらして頂けた先生方に心から感謝申し上げます。

トップバッターは母校の後輩二人。病院臨床試験部のH教授による1/5の講義、第1回「臨床試験」を受けて、1/10(火)の第二回は「薬剤経済学」と「薬事規制」の二本立て!

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精神科に入局しながら今は厚労省に在籍するY先生と耳鼻科に入局しながら今はPMDAに在籍するK先生。臨床医になり4-5年すると、大体医療の現状、そしてその後の将来像が見えてきて、ほぼ皆が思うことは「俺たちこのままこれを続けていいのだろうか?」というものです。そこで「いやいや、俺はこれでいいんだ!」と思う人はそのまま臨床医を続けることになるのですが、そうは思えない人たち、おそらく我が母校の多くの人間はこちらであって欲しいと思いますが、この日のお二人は後者だった、という訳です。彼らは縁あってあの日本の政治経済の中枢と言える「霞が関」に行くことになるのですが、私もことあるごとに学生さんには「皆が人と同じことをやる必要はない」と伝えているので、お二人はまさにそれを地で行く実例となるのです!最近の医学部の偏差値は上がっており、本来は医学部ではなくてもいい人まで医学部に来ている現状があると私は感じておりますが、そんな本来必ずしも医師にならなくてもいい人は、むしろ医師資格を持ってできる様々な生き方を知ってもらってその能力を社会で十二分に発揮して欲しい、そんな思いがあります。

学生から見たら先輩ですが、母校の後輩二人による熱のこもった講義は大好評‼︎

講義後に取った出席代わりのアンケートは出席者96人中76人が意見を書いてくれるという高返答率がそれを示しています。

我々の活躍の場は臨床医だけに留まらないことは確実に受け取ってもらえたようで、企画した者としては大満足!

「千葉大に来て一番面白い講義でした。安西先生より面白かったです!」なんて回答もあり、嬉しさ半分、悔しさ半分、、、あれ、大人げない?(苦笑)まあ、学生に近い世代の方が受けが若者に受けがいいのはある意味当然ですからね‼︎(と半分負け惜しみ)

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1/11(水)、「臨床薬理学」シリーズ第3回は世界で初めてエイズ治療薬を見出し、ノーベル賞候補とも言われるNIH NCI/国立国際医療センター研究所長の満屋裕明先生を、初めて千葉大、そして千葉にお招きし、医学部3学年薬理学講義、そしてリーディング大学院セミナーをして頂きました。当然?この満屋先生も「無給」(大汗)。いや、それでもお越し頂けたことに深謝です。満屋先生には医学研究院長のお計らいもあり、「千葉大学客員教授」の称号が付与され、今年から3年間、千葉大とのご縁をお持ち頂けることになりました!

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この満屋先生を千葉大にお招きすることは、私が現職を得るために戦った薬理学教授選での「公約」として掲げたものでした。私自身「本気で薬を作るということはどういうことなのか」を血液内科教授で「臨床医」である満屋先生から学んだと言えますので、医学部学生だけでなく、大学院生始め多くの方々に知って頂きたいと思っておりました。自分の選挙公約?を実現できたことも嬉しいのですが、多くの方々にご出席頂きましたこと、ご参加の皆様に心より感謝申し上げます。

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驚くと同時に嬉しかったのは、講義直後に1人の3年生が薬理学教授室まで満屋先生を訪ねて来てくれたことです! 獨協医大の4年間でもそんな学生さんはいませんでしたから、私が講義でも伝えている「一歩を踏み出すこと」を実行してくれた学生さんの勇気に満屋先生共々敬服しました。

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そしてサプライズが! 昨年定年で教授を退任された解剖学の年森現千葉大学特任教授はなんと満屋先生と熊大医学部でご同期だったとのことで、薬理学教室にまでお越し頂いたのです。なんと10数年?以上ぶりの同級生のご対面が実現しました。

そして1/12(木)、医学部3学年薬理学講義の最後を飾るのは、「臨床薬理学」シリーズ第4回「腎障害患者への薬物治療」と題し、千葉大学医学部の先輩で私が長年日本腎臓学会で大変お世話になっております、聖路加国際病院副院長・腎臓内科部長の小松康宏先生(S59卒)にお越し頂きました!

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小松先生が医学部本館に足を踏み入れるのは何と20年以上ぶり!とのこと。私も1995年に千葉大を離れて昨年に戻るまで約20年母校を離れていたのでなんとなくそのお気持ちがわかります。私が小松先生にお会いした当時、私は北里大、小松先生は女子医大に在籍し、お互い母校を離れアウェイで生きる辛さを共有?するだけでなく逞しさと柔軟さを身につけたある意味(先輩ですが)同士という認識があります。そして、今回は母校を離れて生きるキャリアのメリット・デメリットを後輩たちに語って頂きたいと感じ、(これまた無給で大変恐縮でしたが)今回の講義のお願いとなりました。

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「多様な薬理学」と言える医学部3学年薬理学講義の最後を飾るのに相応しい私の尊敬する先生で終われたことを大変有難く思います。

そして夕方は学位審査二件、どちらも英語。いや、正直疲れましたね。自分の専門とは異なる内容でもあり、またどちらも1時間近くやるので(汗)

そして1/13(金)にも学位審査1件。これで今月7件終了、峠は越しました。

濃厚な1週間が無事?に終わり一段落。この日の夕食はC-ONEにある丸亀製麺で一人「鴨ネギうどん」! でも帰宅後家で家内と缶ビールで乾杯でした(^^)

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来週は久しぶりの獨協医大、そして今年初の講演で新潟出張です!!

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