薬理学会理事会報告の報告その1:関東部会開催回数問題

8/5(水)2020年度第2回日本薬理学会理事会がZOOMによりオンライン開催されました。私は三鷹ー千葉の通勤途中ということもあり、学会事務局のある弥生の学会センタービルに行くのはそれほど苦ではないのですが、そうは言っても平日の午後に職場を出て東京に行くのは職場滞在時間が短くなるので、やはりオンライン会議は時間を有効に使える、という点では確実に便利ですね。

一般会員の声を理事会に反映させたい、という思いで立候補して理事になった私ですので、その声がちゃんと理事会に届き、実際に動きがあったのか?、という点で「安西は本当に役に立っているのか?」を、私に投票頂いた皆様からご評価を頂く必要があるのではないか、というこれも会員視線で自分を見る必要があるという思いから、私が何をしているか、について、私が支障がないと考える範囲で、お伝えしたいと思います。

今回は「関東部会開催回数問題」です。

ずっと以前にこの異能塾の中で以下のような記事を紹介しておりました。

139回日本薬理学会関東部会

昨年3月に行われた役員選挙でご投票を頂き、この4月から2期目の理事を拝命したわけですが、この新年度の第一回理事会にて、私が関東部会開催回数案件の取りまとめを行うように新理事長のY先生から打診をされました。

上記のようにもともと関東部会回数削減派でしたので、発言したからには依頼されたら断らないのが私のポリシー!、ということで勿論答えは「はい」、ということでお引き受けをしました。
(言うだけ言って、でも自分がやる段になると「私は、、、」と逃げる人にはなりたくないですからね、笑)

通常関東部会のことはその期の関東部会所属現役理事の中で決める、と言うのが通例ですが、意見聴取は今期だけでなく前期の関東部会所属理事にも行いたい、そして今期前期監事の先生方にもその高い見識からご意見を頂きたいと言うことで、今年の春の関東部会(学術評議員会)にて報告を行うべく、今期および前期 関東部会所属理事・監事へのアンケートを行いました。

アンケート内容は
1、今後の関東部会開催回数
2、回数変更の意見聴取対象
3、近畿部会と足並み合せるか
の3つです。その他として自由意見も頂きました。

今回のアンケートはこれまで学会の中で長く続いてきたことの変更になりますので大きなことではないかと考え、2の項目を入れました。1でもし理事監事の意見が割れた際に、理事監事の意見で押し切るべきか、一般会員の代表である代議員(4-50人)まで聞くべきか、あるいは学術評議員全員(400名前後)を決めておいた方がいいかな、と考えたからです。
3の項目は関東部会とともに年2回開催し、大変盛り上がっていると言う話を聞いている近畿部会と足並みを合わせるべきかどうか?、合わせることはつまり年2回実施することになるわけですが、念の為関東部会の行動を決めるために確認の意味で入れました。

理事監事へのアンケートの結果が以下の通りです。

1、今後の関東部会開催回数ですが、年1回派が過半数を超えたものの、年2回派も1/3以上はおり、これは簡単に1回にはシフト出来ないな、と言う結果です。

2、回数変更の意見聴取対象では、完全に3つに割れました。
それは約400名いる学術評議員にアンケートすべきですが、半分と言わず、1/3でも回答が戻ってきた場合、100人以上の回答を整理するだけでも(私が)大変なため、4-50人いる代議員を対象にすることにしました。それとは別に個人的に関東部会の部会長経験者の意見も伺うことにしました。

3、近畿部会と足並み合せるか、ですが、約半数が近畿と足並みを合わせなくてもいい、という結果でしたが、近畿は今後も2回で継続予定(近畿部会所属理事5名への聴取から)ですので、関東が1回に減ると、確かになんとなく関東部会の威信低下?に繋がるかな、という印象はありますかね。

ということで、この結果は2020年6月6日オンライン開催の第142回日本薬理学会関東部会 学術評議員会にて報告させて頂きました。
それを受けて、6月中にアンケートを実施。ほぼ全員に近い代議員の方々からお返事を頂き、一部学術評議員の先生からも頂き、結果をまとめました。
これは秋の関東部会学術評議員会にてご報告をさせて頂きますが、8/5の理事会で報告いたしましたので、公知の事実になったと判断し、一足早くここでご紹介させて頂きたいと思います。

まずは「関東部会開催回数」ですが

部会長経験者も2/3が年1回支持で、さらに代議員になりますと76.4%が1回を希望しておりました。これは確実に民意は「年1回」と判断しました。

次に「近畿部会と足並み合せるか」ですが、

部会長、代議員共に足並みを合わせる必要はない、という意見で、代議員では87.5%に上りました。

これだけの結果を見れば、関東部会は「年1回」となり、はい終了!、なのですが、アンケートに回答して頂いた先生方から多くの自由意見を頂きました。
そのいくつかをスライドにして理事会でもご紹介しましたので、それを転記させて頂きます。

「開催年1回化のメリット・デメリット」

メリット
負担が軽減されるため、少なくとも現時点よりは活性化が期待できる
他部会へ(隣)の参加もしやすくなる
回数にこだわって盛り上がりに欠ける部会を維持するより、1回に減らし、開催時期を再調整して行う方が、マンネリ意識が解消できる
最近は様々な学会、研究会が増えており、参加するのも大変なので、負担を減らす意味で1回が良い
薬学部は、大学院生の人数が減り、さらに教育業務が忙しく実験が出来ない状況にある。年1回になると、年会と秋頃の部会でそれぞれ発表することが可能
学生に細切れに発表させることがないので、全体的に部会のレベルが上がる→参加者の人数が増える→会費が増え、招待講演への資金繰りが楽になる→学会の科学的質が向上
開催回数を少ない方がブース展示などを含めたスポンサー企業を集めやすいくなる。また、数合わせの様な演題も減る
会員の参加率が上がる、発表者が増える、学会開催の時間と費用を節約できる
春の部会は年会も近く演題を作成するのが難しい。また、大学内の業務なども忙しい時期で無理をしないと参加も難しい。そういう事情で秋の学会の方が参加しやすい。
現在の年2回の内容や発表演題数、参加者数などからは、年1回にまとめて実施したほうが、より密度の濃い部会になると期待できる。
年会を開催していることもあり、地方会は年1回でも良いと感じる。関東部会の参加人数が減少しているが、回数を減らすことで参加および発表人数が増加すると予想される
年1回の方が、発表の学術的価値が希釈されない
春の薬理学会と秋の関東部会というようにすると時期の重複が少なくなり、負荷も分散されるためそれぞれの意義がよりはっきりする。負担が軽減され、活性化が期待できる
学生が少なく演題を出すのが困難な場合、一回の関東部会と年会を目標にしてきちんとしたレベルの演題を出せる。部会を開催するために充てる時間を自身の研究そのものに当てることができる。
薬学部6年制化で教員学生ともにその体制の変更、特に研究の位置づけの変化が余儀なくされ、昔と比べ大学院生が減ったことなど、取り巻く環境の変化を鑑み、年1回が今の状況に適する。演題数増加が見込める
この数年(というよりもかなり以前から)、学会、研究会の数が多くなりすぎているように感じています。そろそろ整理すべき時期にきているのではないでしょうか。

デメリット
近畿部会との差別化により、西高東低現象がこれまで以上に強くなる
域内の会員の情報交換や親睦を深める意味では、現在の2回開催は良い
部会を開催するタイミングが減るので、大御所の先生の負担が増大
学生、大学院生の発表の機会、ディスカッションの機会が減る。会員同士の情報交換や交流の機会が減る
出張費用の負担を抑えながら、学生を参加・発表させる機会を減らしたくない
学生の成長に繋がる発表機会が減じる/若手の発表機会が減る
部会は、年1回でも2回でも、演題登録数はそれほど変わらないかもしれない。学会活動を簡素にすれば、その流れに準じて、活力が容易に落ちる
部会長を強く望まれている先生方にとってその役割が回ってこない可能性が増える。熱意ある先生方の気持ちを削ぐことになる点が懸念。一般会員の薬理学会への愛着や帰属感のようなものが低下する。関東部会の案内が年2回くるので、演題を出さなくてはならない時点で会員であったことを再認識することも多いのでは。 学生さんの発表機会が減ることによる業績の減少。若い人は例えば、奨学金や学振などに応募する上で一行足せることは重要。部会を減らした分、工夫して色々な賞を出すなどで補うことも必要。
「いずれかで参加・発表できる」という選択肢が減る
アクティビティの維持ができない

頂いたアンケートの中で、お一人の代議員の方の分析意見が大変ふにおちるものでしたのでご紹介させて頂きます。

************************************************************************************「開催年1回化:某代議員の意見(分析)」
関東部会においては,発表や開催において,薬学部がある程度の役割を果たしてきたことは,否定できないと思います. 関東部会エリアには,下にも述べました様に,国公立大の薬学部は少なく,私立薬大が一定の役割を果たしてきましたが,6年制移行後,研究に費やすことができる時間が一部の大学をのぞいて少なくなっており,さらにこのコロナウイルス感染症の蔓延で,研究はほぼストップ状態です. 正直,私立薬学部に勤務する立場から申し上げますと,年2回の関東部会での演題発表は,他の所属学会にも演題を出すことを考えますと,本当に困難です. あと,春の関東部会は今回は6月でしたが,近年は7月上旬の土曜に行われることが多く,この時期は,私立薬大でも比較的研究が可能で演題数も多い,他大の卒論発表とかさなり,参加しにくい状況です. また,6月に開催するにしても,年会が3月にありますので,間が3ヶ月しか空いておらず,なかなか演題を用意できません.

独法化以降,予算が厳しいとの話は承知しておりますが,やはりある程度研究に注力できるのは,国公立の薬学部ではないかと思います. 関東部会エリアの国公立大学の薬学部は,東大,千葉大,静岡県立大の3つしかありません.国立大学の数だけで言えば,北部会(北大,東北大)や西南部会(九大,熊本大,長崎大)と同じか,むしろ数が少ないです. 近畿部会エリアには,京大,阪大,岡山大,広島大,金沢大,徳島大,名古屋市立大,岐阜薬科大があります.和歌山県立医大も近く薬学部を開設する予定で,薬理系の教員も優秀な先生方に決まっていると聞いております.

医学部に関しても同様で,関東部会エリアの国公立大は,東大,東京医科歯科大,千葉大,筑波大,群馬大,山梨大,信州大,浜松医大,横浜市立大の9大学ですが,近畿部会エリアには,京大,阪大,名大,岐阜大,神戸大,三重大,滋賀医大,福井大,金沢大,岡山大,広島大,香川大,徳島大,名市大,奈良県立医大,和歌山県立医大,京都府立医大,大阪市立大と18大学あります. これだけ,前提となる条件が違いますと,関東部会と近畿部会で足並みを揃えるのは正直難しいと思います.

多くの私立薬大でもある程度研究が可能で,ある程度演題を用意できた時代ならまだしも,この様な状況ですので,関東部会の年2回の開催を無理に継続するよりも,年1回に変更した方が,むしろ演題数や参加者数も改善し,活性化できるのではないかと考えます.
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さらに開催回数だけでなく、今後に向けた提言も沢山頂きました。以下に紹介します。

「関東部会の活性化に向けて」
年1回にする代り、関東→近畿、近畿→関東へのOnline参加相互にする
日本臨床薬理学会 関東・甲信越地方会との合同開催も視野に入れる
関東部会の他に、Webを活用した会議、講演会、セミナーなど、多くの人が参加し、発表できる機会を作る
年1回に削減して、デメリット優位ということになれば戻せば良いので、1度改革案を試す価値はある
年1回化で教員や学生の交流の機会が減ることになるので、関東部会という形ではなく、その時々に関心の高いテーマでシンポジウムやワークショップなどを臨機応変に企画、開催してもよいかと思う
オンラインの利用です。昨今のコロナウイルスの影響でオンラインで開かざるを得ない学会がふえています。勿論学術集会は実際に対面し人と人の生の交流が非常に大事なものであることは言うまでもありませんが、逆にオンラインならではの有効性もありうるのではと思っています。開催する側ではコストの低減化、遠隔の研究者や学生が参加する上での物理的金銭的な障壁の低下などです。関東部会をオンライン開催か集会+オンラインのハイブリッドでも良いことにするのも手かも。
「薬理学」のアイデンティティが薄れてきている。かつて生理学会が持っていた危機意識のように、薬理学会としても対象分野を広げ、多くの研究者が参加したくなるような学会にしなければならない。ただ、既に薬理学会もそうした活動を行ってきたはずだが、分子生物学会などに遅れをとっている気がする。多くの学生が分子生物学会には出品、発表を考えているのが現状ではないか。
「薬理学」の中には分子生物学も発生学も、遺伝学も感染症学も、有機化学も本来包含されているはずだが、薬理学会がそれを抱えきれず、分子生物学会などそれぞれの学会に人が集まってしまうのが現状か。
製薬企業の方から、薬理学会に魅力無しとの厳しい意見が聞かれる。
薬理学会の世間への認知度を高めるための広報活動など、外に向けた活動がこれまで以上に求められているのかもしれない。

ということで、「アンケート結果を受けての提案」として以下のことを打ち出し、今期関東部会所属理事の間で決定しました。
・2026年までの5年間を以下のように実施(5年以内に見直し)
・対面開催の関東部会は年1回秋のみ開催(2023年から)
・年会に近く演題の集まりにくい春の関東部会はオンライン開催とし、関東に捉われずに全国(及び海外)からも参加可能なもの、例えば講演会やシンポジウム・ワークショップをメインにしたテーマないし分野を絞った(Single topic conference等)内容とする

このCOVID-19がどこまで続くのか、にもよりますが、今後収束に向かうと考えた際には、このような形でとりあえず5年間は進め、さらにその先のことに関しては5年の間に見直す、ということで、まずはトライアルとして実施することになりました。

完全なものを目指すのではなく、今後どのような世界になっていくのか、いつでも柔軟に対応出来る学会運営をすることが、重要かと思います。

とりあえず5年はこれで行きますが、今の時点、そして実際に実施した今後、皆様の意見を頂き、時代に合ったより良いものを会員の皆さんと目指して行ければと思います。

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