トランスポーター研究会第11回九州部会JTRAQ11(11/23)にて、ランチョンセミナー講演を行います!

令和元年11/23(土)に鹿児島大学・郡元キャンパス・学習交流プラザで開催されます「トランスポーター研究会第11回九州部会」のプログラムが以下のweb siteにて公開されております。

http://www.kufm.kagoshima-u.ac.jp/~pharmaco/trans11/index.html

このJTRAQ11にて、私は12:30からのランチョンセミナーとして、「選ばれる人生:生存者バイアスを乗り越えて」と題する講演をさせて頂くこととなりました。
あれ、これと似たタイトル、昨年も聞いたような、、、
最後にその抄録を転載しておきます!

来年4月からは日本薬理学会理事も2期目に入りますので、もうそろそろ年会とともにこの九州部会も「卒業」させて頂きたいと考えており、今回がこの部会での最後の講演かな、と。

11/2(土)は大宮での第16回氷川フォーラム、11/8-9は日仏医学コロック、11/15(金)は沖縄での第4回黒潮カンファレンス、11/29(金)は高知での第29回臨床代謝内分泌Updateでその翌日11/30(土)は千葉で私が主催する第249回生理学東京談話会と、11月の土日もスケジュール目白押し!(汗)
勤労感謝の日の11/23(土)は、鹿児島に駆け付けたいと思います!

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生存者バイアス(survivorship bias)または生存バイアス(survival bias)とは、何らかの選択過程を通過できた人・物にのみを基準として判断を行い、通過できなかった人・物は見えなくなるため、それを見逃してしまうという誤謬である。われわれには、勝者に注目する心理があり、勝者を称賛し、勝者の言葉を重く、ありがたく受け止めるものの、敗者はなかったかのように扱われ、敗者の言葉を重く、ありがたく受け止めようとする人は少ない。世の中に溢れている情報や価値観はこの生存者バイアスにより、偏っている可能性が高いと言える。そのため、その偏った評価に基づく判断は間違いになりやすい。

長く同じ世界で生きることはこの生存者バイアスのかかった概念や価値観の固定化につながりやすく、お年寄りに多く見られる傾向のある思い込みが激しく、自分自身が生きてきた経験による価値観のみを信じ込み、それを他人に押し付ける人になってしまう可能性がある。  研究者も人としてこの世を生きる上で「人生」の多くの岐路に差し掛かる機会を持ち、その度にどの道に進むべきかの判断を迫られるが、他人から受けるアドバイスの多くにこの「生存者バイアス」のかかった情報を嫌でも受けることになる。成功者の言葉は重く、ありがたく受け止めがちだが正直正しいとは限らず、また、成功者のやり方が自分に合うかどうかもわからない。つまり、多くのアドバイスを受ける際に、その正当性妥当性を判断するのは受け手にかかっている。

演者もこれまでに、特に伝統ゆえに因習に取り囲まれた「医師」の世界に所属する住人として多くのアドバイスに晒されてきたが、日本人の平均寿命を考えるとまだ長いとはいえない54年の人生の中で、数々の生存者バイアスのかかった価値観に出会ってきた。ある意味私の人生はその価値観が自分にとって妥当なものであったか否かの比較検討という「人生の実験」の現場であったと思えるし、ある意味現在もその実験途中である。

自分の出身大学を卒業してそのまま大学病院に就職し、当初は所謂ホームで勤務した私だが、4年後にはそこを去り、アウェー環境の中で生きることを選び、多くの荒波に揉まれながら今の位置にたどり着けたのは、「幸運」以外の何物でも無いとは言えるが、生存者バイアスのかかった価値観に晒されながらここまで生き抜いてきた人生を振り返ると、アウェー環境でいやでも遭遇するSDS(S:修羅場、D:土壇場、S:正念場)を乗り越えるた「胆力」と、その中で身につけた「メタ認知能力」がその原動力になったのでは無いかと感じる。

「メタ認知」とは“自己の認知活動(知覚、情動、記憶、思考など)を客観的に捉え、評価した上で制御すること”であり、メタ認知能力の高い人とは、イメージ的には、“もう一人の自分がいて、自分のことを離れたところから客観的にみて、自分自身をコントロールする”人のことを言うとされる。基本的には、人間は自分にできないことを知りたくなく、むしろそこから目を背けてしまいがちだが、それを認識して意識的に行動することで、セルフモニタリング(評価)とその結果からのコントロール(制御)の繰り返しを行う中で、メタ認知能力が鍛えられるという。メタ認知能力は、スマホやネット、AIなどの普及により変化の激しい時代に対応するための大切な柱である、すなわちイスラエルの歴史学者、ユヴァル・ノア・ハラリ氏が警告するような人工知能(AI)とバイオテクノロジーの力でごく一握りのエリート層が、大半の人類を「ユースレスクラス(無用者階級)」として支配するかもしれない社会において、AIによる支配に抗して生き残るための必要な能力の一つになることも予想される。

この生存者バイアスの蠢く世界の中をメタ認知能力を鍛え上げることにより生き抜き、(研究者として)その力を発揮できるポジションに選ばれて行くか?、もがき苦しみながら今も生き抜いている一人の人間の生き様の中からヒントを得て頂ければ幸いである。

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