2023年前半の山場:6月の横浜毒性学会

昨年12月に私が主宰した横浜薬理学会、年が明け1月にはその黒字化が確定し、ほっとしたところで力が抜け、2月から3月まで「燃え尽き症候群」になったことは以前にお話ししました。

58歳:燃え尽き症候群?

しかし桜の開花とともに燃え尽き症候群から脱出したのですが、やはり学術集会の開催やその後の停滞で溜まった仕事は半端ではなく、4月から6月までの今年前半は、その対処で終われ、8月に入りようやくそれらから脱出できたかな、と言うところです。
(まあ、今度は科研費の締め切りが迫ってくる訳ですが)

自分が主宰したことで、昨年末の横浜でのJPW2022大会/第96回薬理年会があまりに大きくてその存在は私以外の方々には見えていなかったかと思いますが、6月中旬に場所も同じパシフィコ横浜で開催された第50回毒性学会学術年会も、そこまで同じとまでは行きませんが、かなり大きなウェイトを占めておりました。

ずっとこれを書きたいと思っていたのですが、忙しくて書けず、こんな形で書きたかったのに書けなかったことは沢山あるのですが、やはりこれだけは書いておかないと、ということで、終了後2ヶ月近く経ちましたが、ここに横浜毒性学会のお話を記しておきたいと思います。

遡ること1年半、横浜薬理年会までほぼ1年となった2022年1月、毒性学会の理事になってはどうかと言うお誘いを頂き、何人かの先生に所信表明がてらご挨拶のメールを送ってはどうか、とのご提案を受け、年明け早々10人近い先生方にメールをお送りしました。

通常は「はい、わかりました。頑張って下さい」と言う短いお返事で終わる中、「先生と私は同じ年の早生まれですね!」に始まる長文のお返事を頂いたのが、衛研のK先生でした。

異能塾塾生の皆様はご存知の通り(笑)、私も長文メール書きなので頂いたメールと等量のお返事をお出ししたところ、さらに私と同じ長いメールの返事が届きます。
負けじと?全ての話題を拾ってお返事をしますと、再び長文のお返事が!

こんな面白い人はいないなあ、と思っていると、「先生の薬理年会の半年後に同じパシフィコ横浜で毒性学術年会、しかも50回の記念大会をやりますので、先生の経験をぜひ自分の会にも活かして欲しいから、ご支援を!」とのお言葉を頂き、しかも衛研の毒性部長でありながらもともと薬理学におられたと言うことで、このK先生に第96回年会のプログラム委員(あの?、スリーハンドレッドプログラム委員会)にご就任を依頼したところ、私の方も第50回学術年会の年会事務局広報担当を依頼される、と言う相互乗り入れが実現しました(笑)

さらに私が年会長として企画したJPW2022大会/第96回年会での「薬理学会ー病理学会共催シンポジウム」

【JPS96】年会長企画「薬理学会ー病理学会共催シンポジウム」のご紹介

ですが、薬理と病理をつなぐ存在としての「毒性学」というスタンスで、K先生にはシンポジストをお願いしました。そして、ここで出てきた問題点を今度は第50回毒性学術年会にて、【第50回日本毒性学会学術年会】企画戦略シンポジウム「学際的毒性学を目指して:医療医学系への拡大」

【第50回日本毒性学会学術年会】企画戦略シンポジウム 6/21(水)9時「学際的毒性学を目指して:医療医学系への拡大」をオーガナイズ致します

へと繋がる、と言う半年を挟んだ薬理と毒性の両学会で、同じ昭和40年男であるそれぞれの年会長が企画の中でも相互に入れ込んだ学術集会となった次第です。

ちなみにこの第50回毒性学会学術年会のTwitterアカウントの中の人は、私です!、もう皆さんお気づきだとは思いますが(笑)
開設後半年でフォロワー約120人とあまり伸びませんでしたが、ツイートのリーチ最高記録は2,400名でしたので、それなりに広報の役割は果たしたかな、と思います。

さて、両学会のプログラムを見て、あれ?、と思われた方、おられますでしょうか?
まずは共通する特別講演演者の存在です。
第50回年会の特別講演演者として

2、「脳とAIの協創で拓かれる世界」池谷 裕二 (東京大学大学院 薬学系研究科)
5、「アカデミア創薬ナラティブ」萩原 正敏 (京都大学大学院医学研究科 生体構造医学講座)

のお二人は、半年前のJPW2022大会/第96回年会でも特別講演をしておられるのです。
(池谷先生は新薬理学セミナーDPCの方でですが)

さらに

特別講演1、「睡眠の謎に挑む:『眠気』の正体を求めて」柳沢 正史 (筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構)

の柳沢先生は、私の一つ前の第95回薬理年会の特別講演演者ですし

教育講演3、「依存性物質の神経系への毒性:子ども,発達期での影響を含めて」池田 和隆 (公益社団法人 東京都医学総合研究所 精神行動医学研究分野)

の池田先生は、日本神経精神薬理学会の理事長もお務めになった方、

と言う第50回毒性学術年会は、毒性でありながら?、「薬理」色の強いものであった、と言えるかと思います。その背後には、K先生が薬理学の人間であったこと(そして先行する私の薬理年会の影響、笑)が大きかったかと思います。

また今回の第50回毒性学術年会は、50年の節目を迎える会、と言うことで、50回記念担当のM先生を中心に、様々な記念事業が実施されましたが、毒性学術年会の中では、前日の団結式(会長招宴)とともに初日6/19の朝1番に開催された

第50回記念式典 ―学術年会の思い出と未来展望―

であったかと思います。年会長経験者である遠藤 仁 先生、堀井郁夫先生、吉田武美先生、津田修治先生が語られたものはそれぞれのお立場からそれぞれが毒性学会をどう作って行ったか、がわかるもので、毒性学会だけではありませんが、学会の「未来」を考える際に、折に触れて学会の「過去」を知ることが重要だな、と思わざるを得ませんでした。

特に毒性学会の前身である毒作用研究会の時代には、薬理学研究者も多く参加し、毒性学会の立ち上げに際に、大きな貢献をしていた訳ですが、その一人が私の師匠であります毒性学会名誉会員の遠藤仁先生で、トキシコロジー学会時代に理事長と学術年会長の両方をされました。

「今回は久しぶりに長く学会にいましたよ」との言葉の通り、2日目のお昼におられなかった以外は3日間参加され、まだまだ健在ぶりを示して頂きました。

かく言う私も、この横浜毒性学会では、「広報担当」として、前日6/18の市民公開講座横浜入りし、6/18朝の開会式から6/20の閉会式までずっと会場にいると言う私とは思えない(笑)学会参加ぶりでした。

実際昨年12月には大会長/年会長として運営事務局に出入りしていたので、今回の横浜でも事務局に普通にズカズカと入り込んで(笑)、なんだか全く自分的には違和感なかったので、半年前の自分の薬理年会にトリップした感じでした。
図々しくも出入りを許して頂いた年会長のK先生に感謝致します。

今回は「広報担当」として、リアルタイムで毒性学会のセッション紹介をSNSで発信していこう!、と頑張ったのですが、JPW2022大会の時もそうでしたが、それができるのも初日と2日目の途中までで、そもそも学会の中身を聞きたい人間にとって、それを聞きながら宣伝もする、と言うのは無理がありますよね(苦笑)
今回も残念ながら、後半のセッションに関しましては、力尽きてしまい、十分な紹介ができなかったことが心残りです。

フル参加と言えば、夜の部もフル参加で、自分の横浜薬理年会の際には、元筑波大のK先生に「大会長は本当に疲れるから、体力を維持するためには、どんなに不義理だ!、と言われても、夜の部のお誘いは断って部屋に戻って早く寝たほうがいい」と言うアドバイスを受け、1晩を除いて夜の会には参加しなかったのですが、今回の横浜毒性年会では前夜の団結式(会長招宴)に参加したのを皮切りに、初日夜の次期会長U先生の会に参加、翌日は全体懇親会とその後の「毒性学会機能系研究者の会」と称する薬理・薬物動態系の先生方の集まりを(私が)主催し、3日連続の活動を行いました。

まあ昨年12月の際には、コロナの第8波が迫っておりましたから、ちょうどよかった?のですがね。

本当は初日、2日目、最終日といろいろ書きたいことはまだまだあるのですが、長くなりましたので、この辺で終わることにします。

何はともあれ、現地対面開催だけで進められ、黒字で追えられた年会長のK先生の功績を称えるとともに、まるで自分の学術集会、と思うほど自由に活動をさせて頂いたことに感謝したいと思います。

昔は大会の運営後に残ったお金は大会長のものとできることで、旨味も多かったと言われていますが、今は残ったお金は学会本体に上納となりますから、財政的な旨味は無いと言えます。
それでも、自分の考える理想の学術集会を目指し、多くの人からの提案を入れてそれを実現し、多くの人に集まって頂き、参加した方々に少しでも「来て良かった」と言って頂けること、自分の多くの時間と労力を割いてでも、そう言う経験を出来ることは研究者としての喜びの一つであると私は思います。
そりゃ面倒ですし、本当は研究をやりたい部下の時間と労力を奪い、色々なクレームに晒されながら、最後は黒字になるかどうかヒヤヒヤしながら日々を過ごす、なんて多くの若い人から見ると「何が楽しいの?」と馬鹿にされそうですが(苦笑)、それでも言えます。

学術集会の主宰は楽しい!

ですね。学術集会は「祭り」です。研究者の祭りです。楽しくない学会に参加してしまったら、「この祭りは楽しくねーな!」と声を出して言っていいと思います。
主宰者は絶対楽しいのですが、参加した人が楽しくなければそれを教えないと、いつまで経っても祭りはよくなっていきませんからね(笑)

なので、日本医学会No.5である日本薬理学会の年会長経験者である私は、今後参加する全ての学会が祭りとして楽しかったかどうか、見ていきたいと思います。

その意味でここのコラムで次に書きたいと思う、英国GlasgowでのWCP2023(国際薬理学会)は、「面白くない祭り」でしたね(笑)
反対に、7/22-23の宮崎での黒潮カンファレンス、そして7/29の野田での下総薬理学研究会は、どちらも「楽しい祭り」でした。

結局なかなか終わりませんでしたが、今回はこれにて!

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